天体が奏でる和音に関する千数百年にわたる科学史

惑星が発する音が聞こえたなんて、ちょっと我々凡人には理解しがたいですが、もしピタゴラスが聞こえたというのであれば、聞こえたのでしょう。「ああ、今日は木星が接近してくる」とか「木星が遠ざかる」とかがわかる人がいてもいいじゃないか、ということにしておきましょう。実際、惑星の音を聞くという考えは、その後千数百年にもわたって、学問上の重要な仮説になりました。

たとえば、ピタゴラスの考えを受け継いだ古代ギリシャの哲学者プラトン(紀元前427年~紀元前347年)は『ティマイオス』の中で、宇宙は音階にしたがって創成がされたと書いています。また、同じプラトンが書いた『国家』の「エルの神話」でも、戦場で倒れたエルが天上を旅した時に、各惑星(実際は恒星や衛星も含む)の軌道を示す8つの輪の上にそれぞれセイレーン(音楽の女神のような存在)が立っていて、輪が回転するのに合わせて一人ひとり違った調子で歌い、全体として協和音を奏でているのを聞いたことになっています。

このプラトンの考えは、後の古代ローマの政治家で哲学者のキケロ(紀元前106年~紀元前43年)に多大な影響を与えたことは、彼が書いた『国家論』の中の「スキピオの夢」を読むとよくわかります。同じような音楽的宇宙観が展開されています。さらに時が流れた18世紀には、モーツアルトがこの「スキピオの夢」を題材にして、「シピオーネの夢」という劇音楽を作曲していますね。

古代ローマの天文学者・数学者で、天動説を唱えたプトレマイオス(83年~168年ごろ)も、負けていません。古代世界の音楽理論を集大成した『ハーモニア』という本で、惑星に音階を与えたうえで、占星術で相性の悪い惑星どうしは、音階の上でも不協和音になっているなどと述べています。

もうビックリですね。でも確かに、相性のいい、悪いというのはあります。それが生まれた星と関係があるのだとしたら、星占いも成立することになります。

星占いの話はさておいて、天球(天体がその上を運行すると考えられた地球を中心とする球体のこと)の運行が音を発し、宇宙全体が和音を奏でているという考えは「天球の音楽」とも呼ばれました。 

この「天球の音楽」という発想は中世以降もよく取り上げられ、シェイクスピアの『ヴェニスの商人』の中では、「天使のように歌う小さな星」のような表現で出てきます。

そして、その延長線上に現れたのが、「ケプラーの法則」を唱えたことで知られるドイツの天文学者ケプラー(1571年~1630年)でした。
(続く)
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