「敵」の王女に託したモーセの養育作戦

古代ユダヤ人(ヘブライ人)の指導者モーセと古代エジプト王とのせめぎ合いは熾烈です。その前にモーセの生い立ちを記しておきましょう。

モーセはレビ族のアムラムの子です。レビ族はヤコブの子レビを祖とする部族(氏族)の一つです。祭司の一族として特別な役割を与えられ、継承する土地を持たなかったため、レビ族はイスラエルの十二支族には数えないのが慣例となっているようです。それはともかく、モーセはまさにヘブライ人の男の子は川に投げ入れてしまえ、というエジプト王の命令があった時代に生まれたことになっています。

『旧約聖書』によると、モーセ自身はエジプトの王宮で育てられました。というのも、パピルスのカゴに乗せてナイル川に流された赤ん坊のモーセを、心優しきエジプト王女が助け上げたからです。しかし、この「美談」も実は策略の一つで、王女が水浴びをするために川に下りてくるのを見計らって、わざとモーセを乗せたカゴを流した可能性が高いと思われます。あまりにもタイミングが良すぎますからね。

この計画に一役買ったのが、モーセの姉ミリアムでした。王女が赤ん坊のモーセを川から引き上げさせるのを見届けると、すぐさま王女のそばに駆け寄り、モーセの実の母を乳母として紹介、見事王女に実母を乳母として雇わせることに成功しました。

まさに一か八かの大勝負ですね。灯台下暗しとはよく言ったもので、わざと「敵」の懐深くに入り込むことにより自分の赤ん坊の姿を見えなくして、その命を助け、しかも実母が息子を育てるだけなのに、養育費まで「敵」から取ってしまうわけです。「そんなのありかよ」って思いませんか。

でも、自然界ではよくあることなのかもしれません。
たとえばカッコーなどの鳥は、ホオジロやウグイスの巣に卵を産み落とし、抱卵や子育てを「仮親」に托す托卵行為をすることがよく知られています。託された「仮親」の実の卵は巣から落とされたり、孵化しても大きい雛に餌をやるという親鳥の習性により、淘汰されたりしてしまいますから、まさに踏んだり蹴ったりです。

托卵は鳥類以外の動物にも見られ、北米に生息するフロリダアカハラガメ(カメの一種)はアメリカアリゲーター(ワニの一種)の巣に托卵。巣の発酵熱で孵化を早めさせ、巣を守るアリゲーターの親を卵の護衛役に利用します。また、ナマズ類に属するシノドンティス・ムルティプンクタートスは、マウスブルーダー(口の中で卵や幼魚を育てる種)であるシクリッドに卵を託す習性を持っています。このナマズの稚魚は、シクリッドの口腔内でシクリッドの卵を食べながら成長するんですね。

モーセの場合は、まだ実母が育てたことになりますから、托卵的ではありますが、正確には「托卵行為」ではありません。ただ「巣」の提供と、「エサ代」は「仮親」に払わせたというだけでしょうか。わが子を守るための捨て身の作戦は、見事成功したわけです。
(続く)
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