記紀に隠されたスサノオの8王子(その9)

『古事記』では誓約に勝ったことになっているスサノオがその後なぜ突如暴れ出すのか、私は当初その理由を「誓約に勝ったので奢り高ぶったのだ」と解釈していました。だってそうでしょう。誓約に負けた腹いせで暴れるならわかりますが、勝ったのに暴れ回る理由がほかに見つかりません。

2011年に『「竹内文書」の謎を解く2―古代日本の王たちの秘密』を書いている時も、最初はそのように思っていたのですが、校正・校閲作業中に突然、ある「閃き」が降って来ます。その閃きとは、「本当はスサノオはアマテラスと仲睦まじく、夫婦としてずっと一緒に暮らしていたかったのだ」という内容でした。

これは意外な発想でした。「えっ、そんな事情があったの!?」と。
しかしながら、この事情を知ってさえいれば、なぜ勝ったはずのスサノオがアマテラスの身の回りで「乱暴狼藉」を働いたかがよくわかるんですね。

つまりこういうことです。
和睦によってスサノオはアマテラスと政略結婚します。日向族にとってアマテラスは出雲族のスサノオに人質に取られたわけですね。出雲族から見れば、アマテラスを人質にとってさえいれば、日向族の首根っこをつかんでいるようなものです(このとき日向族から見れば、スサノオが戦いに勝ったのをいいことに傍若無人に振る舞ったと解釈することもできます)。

同時にこの人質事件は、日向族にとっては「天照」という太陽信仰の祭祀王の称号を出雲族に取られたことにほかなりませんでした。つまり「天照」という太陽が消えてしまったわけです。これがアマテラスの岩戸隠れの本当の意味です。

ところがこの人質事件には不測の事態がありました。スサノオが人質のアマテラスのことを本当に好きになってしまったんですね。そしてなんとアマテラスも敵将であるスサノオのことが好きになってしまったんです。二人は愛し合い、三人の女の子が生まれたのはご存知の通りです。

三人の子供に恵まれ、二人はその後仲睦まじく幸福に暮らしました・・・・・・とはならないのが、現実の世界の政治です。

日向族にとっては統一王朝の後継者となるべき王子が生まれなかったのだから、政略結婚は破たん、和睦は無効になったと見るわけです。そこで日向族は、女スパイであるアメノウズメら密使を送って、敵国、すなわち「岩戸」から出てくるようアマテラスの説得工作を開始します。

最初はアマテラスも、愛するスサノオのところから去るつもりはなかったのかもしれません。しかし、日向族の女王として正統な王位継承者をつくらないまま敵国にとどまってしまったら、日向国の将来もありませんね。なにしろ未来を照らすはずのアマテラスが不在なのですから、じり貧になるだけです。日向族のタヂカラヲやアメノコヤネ、フトダマらに半ば強引に説得させられたアマテラスはスサノオの下を離れることを決断します。

この話を聞いたスサノオはアマテラスをなじります。「なぜこんなにも愛し合っているのに、俺を見捨てるのだ」と。どうしてもアマテラスを手放したくないスサノオは、行き場のない怒りをアマテラスの侍従らにぶつけ、当たり散らします。『古事記』ではこのスサノオの「当たり散らし」のせいでアマテラスが岩戸隠れをしたことになっていますが、本当は順番が逆なんですね。アマテラスが「岩戸」を去るので、当たり散らしたというわけです。

自分の思うようにならないので、お皿を投げて割ったり、モノに当たったりする人がよくいますよね。『古事記』が描くスサノオのアマテラスに対する嫌がらせは、まさにこの行動です。

だけどアマテラスの決意は固く、スサノオも泣く泣く日向国に帰ることを認めます。政略的ではありましたが、結婚生活は破たん、統一王朝の夢も消えました。アマテラスは日向国に戻り、スサノオは出雲国にとどまり、日向国と出雲国の勢力抗争も振り出しに戻ります。

ただしアマテラスは確かに日向国に戻りましたが、統一王朝の王位継承者が持つ三種の神器、あるいは十種神宝は出雲族の手にほとんどが渡ったように思うんですね。だから「天照」という祭祀王の神器も後にスサノオの子ニギハヤヒが持つことになるわけです。唯一日向族に渡った神器こそ「草なぎの剣」だったのではないでしょうか。それはスサノオからアマテラスに送った「愛の証」であったと私は見ています。
(続く)
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