記紀に隠されたスサノオの8王子(その6)

オオトシが三輪山の神である大物主であることはわかってもらえたと思います。大物主が大国主ことオオナムヂではないかとの説もありますが、オオナムヂを助けたのが大物主ですから矛盾してしまいます。ただし大国主も大物主も称号のようなものですから、オオナムヂが大国主のほかに大物主という称号を持っていたという可能性はあります。ただしその場合でも、三輪山の大物主はオオトシということになります。

その三輪山の大物主ことオオトシとニギハヤヒを結びつけるのが、『先代旧事本紀』に「天照國照彦天火明櫛玉饒速日尊」(あまてる くにてるひこ あまのほあかり くしたま にぎはやひ の みこと)と記されているニギハヤヒの正式名称です。
この正式名称がとにかくすごいです。

何がすごいかと言うと、アマテラスの称号が入っていることです。アマテラスは「祭祀王」という意味の可能性が極めて高いです。よくアマテラスは男神であったのではないかという「アマテラス男神論」を見受けますが、祭祀王の称号ですから別に女性がやっても男性がやっても構わなかったのではないでしょうか。つまり男神のときもあれば女神のときもあったわけです。ではなぜ日向族の祭祀王の称号をニギハヤヒがもっていたのかが、問題ですね。それはこの後触れます。

その前に、ニギハヤヒの正式名称の分析を続けましょう。国照彦も称号だと思われます。天照が太陽の神なら国照は大地の神ですね。私はこれを「政治王」の称号であると見ました。

次の天火明はおそらく「軍事王」の称号です。正統竹内文書の口伝によると、オオナムヂの国作りを三輪の神が助けた『古事記』の記述は、実は琵琶湖で敵軍に追い詰められ窮地に陥ったオオナムヂを、オオトシが軍艦に乗って駆け付けて助けたときの話なのであるといいます。そう解釈すると、「海上を照らして近づいてくる神」の意味が分かって来ます。煌々と火明かりをつけた軍艦が援軍として到着した情景であることになるんですね。

櫛玉も極めて重要な称号です。三輪山の大物主の別名が、倭大物主櫛甕魂命(ヤマトオオモノヌシクシミカタマノミコト)。『出雲国造神賀詞』では大物主櫛甕玉といいます。このことからもニギハヤヒと三輪山の大物主(オオトシ)が同一人物であることの傍証になります。でもそれよりも、この櫛玉と聞いて、何かを思い出さないでしょうか。私がすぐにピンと来たのが、スサノオが娶ったクシナダヒメです。このとき初めて「櫛」の称号が出てくるんですね。それにプラスして勾玉の「玉」。越の国と関係のある巫女、つまり神降ろしの称号か、陰陽師のような能力者の称号ではないかと私は見ます。

そのものすごい称号を持つニギハヤヒですが、『日本書紀』などの記述によれば、神武東征に先立ち、アマテラスから十種の神宝を授かり天磐船(軍艦)に乗って河内国(大阪府交野市)の河上の地に天降り、その後大和国(奈良県)に移ったとされています。つまり大和地方の王であり、「近畿王」であったわけですね。

その大和の三輪山の神がオオトシなんですから、地政学的に言って、まず間違いなく同一人物です。

ここに来て、スサノオが事実上の天下を取った後、その王子たちがそれぞれどこの領土を得ていたかがおぼろげながらわかって来ます。紀伊国がオオヤビコ、大和国がオオトシことニギハヤヒです。出雲国と越の国は末子スセリビメを娶ったオオクニヌシことオオナムヂが実質的に支配していたのではないかと思われます。そして名実ともに統一王的な力を持っていた、つまりあらゆる称号を兼ね備えていたのが大和国のオオトシであったのではないでしょうか。

実は『古事記』を丹念に読むと、『古事記』編纂者がポロッとこの事実を漏らしてしまっている個所があるんですね。
オオナムヂが正妻のスセリビメを出雲において大和の国に出発する場面で、なんと「出雲から大和国へお上りになる」という表現を使ってしまっているんです。これはどう考えてもおかしいです。なぜなら神武が東征する前には大和国などなかったはずですから。しかも葦原中国は出雲であって、大和ではない。オオヤビコのいる紀伊国は出てきますが、大和国の記述などまったく出てきていないんです。なのに出雲国から大和国に「上る」ということは、当時大和国が実質的な統一国家であったことを知っていたので、うっかり「上る」と書いてしまったと読めるんですね。つまり、出雲の王オオナムヂが義理の兄で実質的な統一王であった大和国のオオトシのところに参上するので、「上る」と自然に書いてしまったわけです。

口伝継承者の竹内氏によると、記紀の編纂者が最も系図改竄で苦労したのが、ニギハヤヒの存在をどう隠すかであったといいます。どうやらその背景には、アマテラスとスサノオの誓約により、「天照」という祭祀王の称号がニギハヤヒに取られてしまったということがあるようです。当時の日本の正統な王はニギハヤヒである可能性が高いわけです。なにしろ『日本書記』によると、真の王の印である「十種の神宝」まで持っているのですから。

記紀編纂者がその事実を隠したいのは当然ですね。そこで「天照國照彦天火明櫛玉饒速日尊」を三つに分けたのだと竹内氏は言います。すなわちニギハヤヒの別名であるオオトシを出雲族のスサノオの息子として系図に残し、「天火明」を日向族のオシホミミの長男にしたり、ニニギの子にしたりして日向族の系図に組み入れ、ニギハヤヒという名前のみを、神武東征の際に「ニニギに先立って降臨した天孫族」ということにして、ニギハヤヒの素性を隠したわけです。
(続く)
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