「アマテラスの孫」暗殺事件の波紋

出雲懐柔策の失敗とアメノワカヒコ暗殺により、日向族と出雲族の和議によってもたらされた平和は風前の灯となりました。和平合意はもう、事実上反故にされたわけです。そして実際にこの後、日向族が出雲国に対して武力行使を開始するのですが、その前に『古事記』では、アメノワカヒコの盛大な葬儀について破格の扱いで取り上げています。

実はこの破格の扱いも、アメノワカヒコが日向族アマテラスの孫であり、すなわちアヂスキタカヒコネと双子であったことの傍証になっています。そうでなければ、高天原(日向族)の命令に背いて寝返った裏切り者を、まるで偉大な功労者のように持ち上げる必要は全く見当たりません。アマテラスとスサノオの実の孫であったことを知らないと、この破格の扱いは説明がつかないんですね。

葬儀では八日八夜の間、歌舞して弔ったと書かれています。おそらく養父母でしょう。アメノワカヒコの父アマツクニタマとその妻子も葬儀に駆けつけました。そこで出会ったのが、死んだ息子と瓜二つのアヂスキタカヒコネであったわけです。息子が生き返ったと勘違いして、養父母は抱きつきます。一方「死者扱い」されたことに怒ったアヂスキタカヒコネは喪屋を切り倒して蹴飛ばす場面が出てきます。このエピソードから推察されることは、アメノワカヒコの養父母にも双子であったことが伏せられていたこと、それにアヂスキタカヒコネと妹のシタテルヒメもアヂスキタカヒコネに双子の兄弟がいることを知らされていなかったことです。事実を伏せられたことによって起きた近親婚や悲劇的な恋愛は、現代のメロドラマでも時々使われるプロットですね。昔からそういうことはよくあったのではないかと思われます。

アメノワカヒコ暗殺は、日向族内部にも不協和音を引き起こした可能性もあります。その点に関して、『古事記』では非常に巧みに書かれています。暗殺命令の前までは、高天原(日向国)が命令を下す時は、必ずタカミムスビこと高木神とアマテラスの二人の神が主語になっていました。ところが、アメノワカヒコ暗殺を命じたのは高木神だけです。その後の、出雲武力行使を命じたのはアマテラスだけになっているんですね。

ここには『古事記』編纂者の明確な意図が介在しています。本来、日向国が何か決定をする際、必ずアマテラスと夫の高木神が最終決断をした。ところがアメノワカヒコ暗殺は高木神の単独判断であった(アマテラスは自分の実の孫を殺す命令は下せなかったとも解釈できます)。仮にも暗殺したのはアマテラスの孫(注:ひ孫であった可能性もあります)ですから、そのためその責任を取らされて、次の武力行使の決断の際には高木神は外された--と、このような意図を私は読み取ります。

ただし高木神が外されたのは、一時的な人事であったことが後にわかります。
出雲国(葦原中国)の武力平定が成功した後、オシホミミを葦原中国に派遣する際には高木神とアマテラスが再び連名で命令を出しているからです。もっとも高木神の名前が外された葦原中国平定命令には、高木神の息子であるオモヒカネが深く絡んでいますから、実質的には高木神も命令に参加していたけれど、アマテラスの孫の暗殺を命じた責任者であった手前、形式的に蟄居していたとみるのが妥当だと思われます。

次は葦原国平定、つまり出雲国への一方的な先制攻撃である「国譲り神話」に隠された古代日本の王たちの系図を取り挙げましょう。
(続く)
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